バナディーヤの住民達 | [ガヤガヤ] |
カガリ | じゃぁ、4時間後だな。 |
キサカ | 気を付けろ。 |
カガリ | 分かってる。そっちこそな。アル・ジャイリーってのは、気の抜けない奴なんだ。 |
ナタル | ヤマト少っぃ…しょっ少年……た…頼んだぞ…。 |
キラ | … |
サイーブ | 行くぞ! |
ナタル | ああ。 |
カガリ | おい!何ボケッとしている。お前は一応護衛なんだろ? |
キラ | ぃやほんとに、ここが虎の本拠地?随分賑やかで、平和そうなんだが…。 |
カガリ | ふん!付いて来い。 |
キラ | え? |
カガリ | 平和そうに見えたって、そんなものは見せかけだ。 |
キラ | あぁ…! |
バナディーヤの子供達 | あははは… |
カガリ | あれが、この街の本当の支配者だ。 逆らう者は容赦なく殺される。ここはザフトの、砂漠の虎のものなんだ。 |
バナディーヤの子供達 | あはは…うふふ…待て待てー…あはは… |
バルトフェルド | [睨む] |
OP(moment) |
明けの砂漠の前線基地に避難中の子供達 | ねぇ待って待って…あはは…あ…どうすんの?うん…え?…えーちょっと待ってよーねー…あはは… |
マードック | あーあぁ…たっくもう…こんなもん持ち込んでよぉ…何だってコックピットで寝泊まりしなきゃ、なんねぇんだよぉ… |
マリュー | でも…いつからそんな… |
フラガ | さぁ…?けど…地球に降りてからじゃないの?…それまで…そんな余裕なかったでしょ? |
マリュー | あの子は…サイ君の彼女…でしょ?それがほんとにキラ君と… |
フラガ | 意外?だよねぇ…俺もそう思うんだけどさぁ… |
マリュー | …ハァ… |
フラガ | あ!ぁぁ… |
フラガ | おかしくなってそうなったのか…そうなったからおかしくなったのかは知らんが、ともかくうまくないな、ボウズのあの状態は… |
フレイ(回想) | キラ?キラってばぁ… |
フラガ(回想) | ? |
マリュー | それにしても迂闊だったわ。パイロットとしてあまりにも優秀なものだからつい、正規の訓練も何も受けてない子供だということを私は… |
マリュー | 君だけの、責任じゃないさ。俺も同じだ。いつでも信じられないほどの働きをしてきたからなぁ、必死だったんだろうに…。 また…い攻撃があるか分からない。そしたら、自分が頑張って艦を守らなきゃならない。そう思い詰めて、追い込んでっちまったんだろうなぁ…自分を…。 |
マリュー | 解消法に、心当たりは?先輩でしょ? |
フラガ | え?…あ…ん〜…あまり…参考にならないかも…。 |
マリュー | のようですわねぇ。取り敢えず、今日の外出で少しは気分が変わるといいんですけど! |
フラガ | …ハァ…いいよねぇ若者は…! |
チャンドラ二世 | しっかし思い切ったことするよねぇ艦長も。 |
パル | ですね。数時間とはいえ、ヤマトを艦から離れさせるなんて… |
フレイ(回想) | 昨夜はキラの部屋に居たんだから! |
キラ(回想) | 止めてよね。本気で喧嘩したら、サイが僕に敵うはずないだろ? |
チャンドラ二世 | あ〜ぁ、俺も出かけてぇなぁ。 |
パル | 護衛って、あいつそんなに強いの? |
チャンドラ二世 | ん?コーディネーターコーディネータ。 |
ミリアリア | …ハァ…。 |
トール | どうした? |
ミリアリア | え…あー、なんか落ち着かないなーって思って…キラ居ないと。 |
トール | う…大丈夫さ、すぐに帰ってくるよ。それまではなんかあっても俺達が守るし。 |
ミリアリア | うふ。そうよね。 |
バナディーヤの住民達 | [ガヤガヤ] |
カガリ | ほら!次行くぞ! |
キラ | あっ…ああ。 |
ジャイリー | しかし驚きましたよー。貴方が私のところへ御出になるとはねぇ。 |
サイーブ | 水を押さえて優雅な暮らしだな、ジャイリー。俺も出来れば貴様の顔など二度と見たくはなかったが、仕方がない。俺達の水瓶を枯れさせるわけにもいかん。 |
ジャイリー | お考えを変えられればよろしいものを…。大事なのは、神殿より命ですよ?サイーブ・アシュマン。水場も替わるものです。が、どこの水でも水は水だ。飲めればいい。それが命を繋ぐのです。 |
サイーブ | そんな話を、今更貴様としようとは思わん。どうなんだ!こっちの要望を聞いてもらえるのか?もえらえんのか? |
ジャイリー | それは無論、同胞は助け合うもの。ま、具体的なお話はファクトリーの方で。はっはっはっは。 |
ナタル | ぁ…ぁぁ… |
キラ | っあぁ…。 |
カガリ | これでだいたい揃ったがぁ、このフレイって奴の注文は無茶だぞ。エリザリオの乳液だの化粧水だの、こ〜んなところにあるもんか。 |
ボーイ | お待たせねー。 |
キラ | 何、これ? |
カガリ | ドネルケバブさ!あー、疲れたし腹も減った。ほら、お前も食えよ。このチリソースを掛けてぇ… |
バルトフェルド | あーいや待ったぁ!ちょっと待ったぁ!ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ!このヨーグルトソースを掛けるのが常識だろうがぁ。 |
カガリ | ああ? |
バルトフェルド | いや、常識というよりも…もっとこう…んー…そう!ヨーグルトソースを掛けないなんて、この料理に対する冒涜だよ! |
カガリ | なんなんだお前は! |
バルトフェルド | あぁ…! |
カガリ | 見ず知らずの男に、私の食べ方にとやかく言われる筋合いはない!ハグッ… |
バルトフェルド | あーーーなんという…… |
カガリ | っんまーーーーいーーー!ほぅらお前も!ケバブにはチリソースが当たり前だ! |
バルトフェルド | だぁぁ待ちたまえ!彼まで邪道に堕とす気か!? |
カガリ | 何をするんだ!引っ込んでろ! |
バルトフェルド | 君こそ何をする!ええい!この! |
カガリ | ぬぅぅぅ! |
キラ | あぁぁ… |
ブルーコスモス構成員A | チィ!いい気なもんだぜ。 |
ブルーコスモス構成員B | あのテーブルに居る子供は? |
ブルーコスモス構成員A | その辺のガキだろ、どうせ虎とヘラヘラ話すような奴だ。 |
ブルーコスモス構成員B | では行くぞ。開始の花火を頼む。 |
ブルーコスモス構成員A | ああ。魂となって宇宙へ還れ!コーディネイターめ! |
バルトフェルド | いや〜悪かったねぇ〜。 |
キラ | …ええ…まぁ…ミックスもなかなか…。 |
バルトフェルド | しかし凄い買い物だねぇ。パーティーでもやるの? |
カガリ | 五月蠅いなぁ、余計なお世話だ!大体お前は何なんだ?勝手に座り込んであーだこーだと… |
バルトフェルド | ! |
キラ | ! |
バルトフェルド | 伏せろ! |
カガリ | うわぁ! |
周辺の人々 | キャァァー! |
バルトフェルド | 無事か君達! |
カガリ | な…なんなんだ一体… |
ブルーコスモス構成員B | 死ね!コーディネイター!宇宙の化け物め! |
ブルーコスモス構成員C | 青き清浄なる世界の為に! |
カガリ | ブルーコスモスか! |
ブルーコスモス構成員D | うわぁぁ!! |
バルトフェルド | 構わん!全て排除しろ! |
ブルーコスモス構成員E | うっっ! |
キラ | ぇぇぃ! |
カガリ | あぁ! |
キラ | ぇぃっ! |
ブルーコスモス構成員F | うわっ!あ!うわぁ! |
バルトフェルド | ふっ。 |
ブルーコスモス構成員F | うわ… |
警護兵 | よし!終わったか!? |
ブルーコスモス構成員F | う…は… |
キラ | …… |
カガリ | お前!銃の使い方知ってるか? それにしれも…。 |
ダコスタ | 隊長!御無事で! |
キラ | ぁ… |
バルトフェルド | ああ!私は平気だ。彼のおかげでな。 |
カガリ | ぁ…アンドリュー・バルトフェルド… |
キラ | え? |
カガリ | 砂漠の…虎… |
バルトフェルド | いやぁ〜助かったよ。ありがとう。 |
アイキャッチ |
ジャイリー | 水と食料、燃料等は既に用意させてあります。あとは、問題の品の方ですが…。 75mmAP弾、モルゲンレーテ社製EQ177磁場遮断ユニット、マーク500レーダーアイ、それから… |
トノムラ | うわぁ…純正品じゃないか… |
ナタル | 呆れるな…ったく。どこから横流しされてるんだか…。 |
ジャイリー | 世界にはご存知ない地下水脈も、多御座いましょう?ふわっはっはっは。ま、その代わりと言っては何で御座いますが… |
サイーブ | 分かっている。どうなんだ?それでいいの? |
ナタル | ああ!品物に文句はないが。 |
サイーブ | 希望した物は全て揃うんだろうな? |
ジャイリー | それはもう。これを。 |
トノムラ | げ!?なんだこの額は…嘘だろ? |
ジャイリー | 貴重な水は高う御座います。お命を繋ぐもので御座いましょう? |
サイーブ | キサカ! |
キサカ | 支払いは、アースダラーでか? |
トノムラ | いっいっ! |
ジャイリー | はい、それでけっこうで。 |
キサカ | では、すぐ運ばせろ! |
トノムラ | ど…どうなってるんですかねぇ?ついて行けないですよ、俺…。 |
ナタル | … |
バルトフェルド | さ、どうぞ〜。 |
キラ | いえ…僕達はほんとにもう…。 |
バルトフェルド | いやいや〜、お茶を台無しにした上に助けてもらって、彼女なんか服グチャグチャじゃないの。それをそのまま帰すわけにはいかないでしょう。ね?僕としては。 |
キラ | … |
バルトフェルド | ふ。 |
警備兵 | こっちだ。 |
キラ&カガリ | ぁ! |
アイシャ | この子ですの?アンディ。 |
バルトフェルド | ああ。彼女をどうにかしてやってくれ。チリソースとヨーグルトソースとお茶を被っちまったんだ。 |
アイシャ | あらあら〜、ケバブねー。 |
カガリ | ぁ…ぅーん… |
アイシャ | さ、いらっしゃい? |
キラ | カ…カガリ… |
アイシャ | 大丈夫よ、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて。 |
キラ | おーい!君はこっちだ。 |
バルトフェルド | 僕はコーヒーには、いささか自信があってねぇ。 |
キラ | ぁぁ…。 |
バルトフェルド | まぁ掛けたまえよ。くつろいでくれ。んっ。 |
キラ | … |
バルトフェルド | エヴィデンスゼロワン。実物を見たことは? |
キラ | いやぁ…。 |
バルトフェルド | 何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、鯨に見える? |
キラ | いや…そう言われても…。 |
バルトフェルド | これどう見ても羽根じゃない?普通鯨には羽根はないだろう。 |
キラ | え…まぁ……あでも、それは外宇宙から来た、地球外生物の存在証拠ってことですから… |
バルトフェルド | 僕が言いたいのは、何でこれが鯨なんだってことだよ。 |
キラ | …じゃぁ、何ならいいんですか? |
バルトフェルド | ん〜〜…、何ならと言われても困るが…、ところで、どう?コーヒーの方は。 |
キラ | … |
バルトフェルド | あ、君にはまだ分からんかなぁ、大人の味は。 |
カガリ | [ブクブクブク] |
バルトフェルド | ま、楽しくも厄介な存在だよねぇ、これも。 |
キラ | …厄介…ですか? |
バルトフェルド | そりゃぁそうでしょう。こんなもの見つけちゃったから、希望って言うか、可能性が出てきちゃった訳だし。 |
キラ | ぁぁ? |
バルトフェルド | 人はまだもっと先まで行ける、ってさ。 この戦争の一番の根っ子だ。 |
キラ | んん…。 |
カガリ | いいよそんなのは… |
アイシャ | いいからじっとして。 |
アイシャ | アンディー。 |
バルトフェルド | おやおや! |
キラ | ぁぁ…… |
アイシャ | あーほら。もう。 |
カガリ | ああ… |
キラ | あー… 女…の子…? |
カガリ | くっ…てめぇ! |
キラ | あいやぁ…だったんだよねって言おうとしただけだよ。 |
カガリ | 同じだろうがぁそれじゃぁ! |
バルトフェルド | うっはっはっは… |
アイシャ | あっはっはっは… |
キラ&カガリ | …… |
マリュー | なんですって!?キラ君とカガリさんが戻らない? |
チャンドラ二世 | うっ! |
ノイマン | のっ! |
パル | あっ! |
サイ | うぅー… |
キサカ | ああ…時間を過ぎても現れない。サイーブ達はそちらに戻ったか? |
マリュー | いえ、まだよ。 |
キサカ | 電波状態が悪くて、彼らと直接連絡が取れない。連絡が付いたら何人か戻るように言ってくれ。市街でブルーコスモスのテロがあったのだ。だが、何をするのにも手が足りん。 |
マリュー | パル伍長!バジルール伍長を呼び出して! |
パル | はい! |
サイ | キラ… |
バルトフェルド | ドレスもよく似合うねぇ。と言うか、そういう姿も実に板に付いてる感じだ。 |
カガリ | 勝手に言ってろ! |
バルトフェルド | しゃべらなきゃ完璧。 |
カガリ | そう言うお前こそ、ほんとに砂漠の虎か?何で人にこんなドレスを着せたりする?これも毎度のお遊びの一つか! |
バルトフェルド | ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは? |
カガリ | 変装してヘラヘラ街で遊んでみたり、住民は逃がして街だけ焼いてみたり。ってことさ。 |
バルトフェルド | いい目だねぇ。真っ直ぐで、実にいい目だ。 |
カガリ | くっ!ふざけるな! |
キラ | カガリ… |
バルトフェルド | 君も死んだ方がマシなクチかね? |
カガリ&キラ | …ぁ… |
バルトフェルド | そっちの彼、君はどう思ってんの? |
キラ | え? |
バルトフェルド | どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては。 |
キラ | うっ!…… |
カガリ | お前どうしてそれを! |
バルトフェルド | はっはっはっは。あまり真っ直ぐすぎるのも問題だぞ。 戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようなねぇ。ならどうやって勝ち負けを決める? |
キラ | ぅ… |
バルトフェルド | どこで終わりにすればいい? |
キラ | どこ…で…? |
バルトフェルド | 敵である者を、全て滅ぼして!…かね? |
キラ&カガリ | あっ! |
サイ | ぅぅ… |
キラ | ぅぅ…ぅ…ぅ… |
バルトフェルド | 止めた方が賢明だなぁ。いくら君がバーサーカーでも、暴れて無事にここから脱出できるもんか。 |
キラ&カガリ | ぅぅ… |
キラ | バーサーカー? |
バルトフェルド | ここに居るのはみんな君と同じ、コーディネイターなんだからなねぇ。 |
カガリ | え!? |
キラ | ぅぅ… |
カガリ | お…お前… |
バルトフェルド | 君の戦闘を二回見た。砂漠の接地圧、熱対流のパラメーター。君は同胞の中でも、かなり優秀な方らしいな。 あのパイロットをナチュラルだと言われて素直に信じるほど、私は呑気ではない。そして見慣れぬ君のさっきの立ち回りだ。 |
キラ | ぅぅ… |
バルトフェルド | 君が何故同胞と敵対する道を選んだかは知らんが、あのモビルスーツのパイロットである以上、私と君は、敵同士だと言うことだな? |
キラ | ぅぅ… |
バルトフェルド | ふふ。やっぱり、どちらかが滅びなくてはならんのかねぇ。 |
キラ | うぅ… |
サイ | ぇ……… |
マードック | な、なんだ?うわぁぁ! |
バルトフェルド | ま、今日の君は命の恩人だし、ここは戦場ではい。 帰りたまえ。話せて楽しかったよ。よかったかどうかは分からんがねぇ。 また戦場でな。 |
マードック | おいなんだってんだよ!まだボウズは戻ってきてねぇだろう! |
フラガ | なんだ! |
ミリアリア | なに?どういうこと? |
サイ | くっそー!なんで! |
マードック | おい止めろ!バカ!誰だ! |
整備員 | さっき…サイって奴がウロウロしてはいたんですけど…。 |
トール&ミリアリア | え!? |
フラガ | なんだってまた! |
サイ | …ぃぃーーーっ! |
ミリアリア | キャーーー!! |
マードック | あっちゃーー… |
サイ | ぅぅぅう゛う゛う゛あ゛あ゛あ゛あ゛うぅぅあ゛あ゛うぅ… |
フレイ | うっ…うっうっうっ…バカね… |
-+-次回予告-+- 共有していたはずの優しい時間、穏やかな記憶。 が、時の流れは、想いを巡らす今をも瞬時に過去へと追いやり、 人々の前には、新たなヴィジョンが姿を現す。 進むことが幸福か、振り返るのが勇気か、交わされる言葉。それもまた。 次回、機動戦士ガンダムSEED、「おだやかな日に」 その未来、開け!ガンダム! |