ナレーション | C.E.(コズミック・イラ)72。一年半に渡った地球、プラント間の戦いは、ヤキン・ドゥーエ宙域戦を以てようやくの集結をみた。やがて双方の合意の下、かつての悲劇の地、ユニウスセブンにおいて締結された条約は、今後の相互理解努力と平和とを誓い、世界は再び安定を取り戻そうと歩み始めていた。 |
カガリ・ユラ・アスハ | だが!強すぎる力はまた争いを呼ぶ! |
ギルバート・デュランダル | いいえ姫。争いが無くならぬから、力が必要なのです。 |
プラント天体運行監視センター職員 | ユニウス7、更に加速2%。依然、地球への衝突コース、005。 |
サトー | 何故気付かぬかッ!我等コーディネーターにとってパトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきものと! |
アスラン・ザラ | はぁ? |
ナレーション | だが、後にブレイク・ザ・ワールドと呼ばれるユニウス7落下テロ事件によって、世界は再び混迷の戦争状態へと陥る。その落下阻止を行いながら共に、地球に降下したザフトの最新鋭艦ミネルバは、カーペンタリアにて受けた新たなる命令に従ってスエズ攻略戦を支援する為、ペルシャ湾へと向かおうとしていた。 |
メイリン・ホーク | コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。 |
シン・アスカ | ん!? |
アスラン | ん!? |
メイリン | パイロットは搭乗機にて待機せよ。 |
シン | ええい!数ばかりゴチャゴチャと! |
インド洋前線基地の兵士 | 退避!退避ーッ! |
インド洋前線基地の兵士達 | うわぁぁぁ! |
民間人達 | あぁ……あぁ! |
民間人の子供 | とうちゃーん! |
ルナマリア・ホーク | あ? |
レイ・ザ・バレル | ん? |
シン | 殴りたいのなら別に構いやしませんけどね!けど!俺は間違ったことはしてませんよ!あそこの人たちだってあれで助かったんだ!うッ! |
アスラン | 戦争はヒーローごっこじゃない! |
シン | く… |
アスラン | 自分だけで勝手な判断をするな!力を持つ者なら、その力を自覚しろ! |
OP(PRIDE) |
ニュースキャスターA | このデモによる死傷者の数は既に1000人にのぼり、赤道連合政府は… |
ニュースキャスターB | 18日の大西洋連邦大統領の発言を受けて、昨日、南アフリカ共同体のガドア議長は… |
ニュースキャスターC | この声明に対しプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは昨夜未明、プラントはあくまでも… |
アンドリュー・バルトフェルド | 毎日毎日、気の滅入るようなニュースばかりだねえ。 |
ニュースキャスターB | ユーラシア西側地域では依然激しい戦闘が続いており、ユーラシア軍現地総司令官は周辺都市への被害を抑止するため、新たに地上軍3個師団を投入する声明を発表しました。 |
バルトフェルド | なんかこう、気分の明るくなるようなニュースはないもんかねえ? |
マリュー・ラミアス | 水族館で白イルカが赤ちゃんを生んだとか、そういう話? |
バルトフェルド | いやあ、そこまでは言わんよ。 |
カガリ | しかし、何か変な感じだな。プラントとの戦闘の方はどうなっているんだ。入ってくるのは連合の混乱のニュースばかりじゃないか。 |
キラ・ヤマト | … |
ラクス・クライン | プラントはプラントでずっとこんな調子ですしね。 |
カガリ | ん? |
挿入歌(Quiet Night C.E.73) |
ミーア・キャンベル | 勇敢なるザフト軍兵士の皆さ〜ん!平和の為、わたくし達もがんばりま〜す!皆さんもお気を付けて〜! |
ラクス | 皆さん、元気で楽しそうですわ。 |
カガリ | これも、いいのか?このままにしておいて。 |
ラクス | … |
バルトフェルド | そりゃ、何とか出来るもんならしたいけどねえ。だが、下手に動けばこちらの居所が知れるだけだ。そいつは現状あまりうまくないだろ?匿ってくれているスカンジナビア王国に対しても。 |
キラ | ええ、それは。 |
カガリ | なら、いつまでもこうして潜ってばかりもいられないだろ。オーブのことだって私は…。 |
キラ | でも、今はまだ動けない。まだ何も判らないんだ。 |
マリュー | そうねえ。ユニウス7の落下は確かに地球に強烈な被害を与えたけど、その後のプラントの姿勢は紳士だったわ。難癖のそうに開戦した連合国が馬鹿よ。 |
カガリ | ああ。 |
バルトフェルド | ブルーコスモスだろ? |
マリュー | まあね。でも、デュランダル議長はあの信じられない第一派攻撃の後も馬鹿な応酬はせず、市民から議会からみんななだめて最小限の防衛戦を行っただけ。どう見ても悪い人じゃないわ。そこだけ聞けば。 |
キラ | … |
カガリ | 実際良い指導者だと思う、デュランダル議長は。というか、思っていた。ラクスの暗殺とこの件を知るまでは。アスランだってそう思ったからこそプラントへ行くと言い出したんだし。 |
キラ | じゃあ、誰がラクスを殺そうとした? |
カガリ | ん? |
キラ | そしてこれじゃあ、僕には信じられない。そのデュランダルって人は。 |
ラクス | キラ… |
キラ | みんなを騙してる。 |
バルトフェルド | それが政治と言えば政治なのかもしれんがね。 |
キラ | … |
マリュー | 知らないはずはないでしょうしね。これ。 |
カガリ | 何を考えてるのかな、議長は。 |
マリュー | なんだかユーラシア西側のような状況を見てると、どうしてもザフトに味方して地球軍を討ちたくなっちゃうけど。 |
バルトフェルド | お前はまだ反対なんだろう?それには。 |
キラ | ええ。 |
カガリ | アスランが戻ればプラントのことももう少し何か分かると思うんだが。一体何やっているかな、あいつ。 |
メイリン | マハムール基地より誘導ビーコン捕捉しました。 |
タリア・グラディス | ビーコン固定。入港準備。 |
マリク・ヤードバーズ | ビーコン固定。入港準備開始します。 |
アーサー・トライン | ふぅ。 |
整備アナウンス | CPU、生化学メインテナンスVチームに伝達。ザクの脳幹冷却システムの交換作業は15時に変更された。 |
マッド・エイブス | 注文通りセンサーの帯域を変えてみた。確認してくれ。 |
ルナマリア | あ!ザラ隊長! |
ヴィーノ・デュプレ | でもいいよなぁ軍本部の奴等。ラクス・クラインのライヴなんてほんと久しぶりだもん。俺も生で見たかったぁ。 |
ヨウラン・ケント | けど、だいぶ歌の感じ変わったよな、彼女。 |
ヴィーノ | ああ、うん。 |
ヨウラン | 俺、前々から今みたいな方がいいんじゃないかと思ってんだけどさぁ。なんか若くなったって言うか、可愛いよな最近。 |
ヴィーノ | それに今度、衣装もな〜んかバリバリ? |
ヨウラン | そうそう!そしたらさぁ胸、けっこうあんのなあ。今度のあの衣装のポスター、俺絶対欲しい! |
ヴィーノ&ヨウラン | ああッ! |
アスラン | セイバーの整備ログは? |
ヴィーノ | …ああっとこれです! |
アスラン | ありがとう。 |
ヴィーノ | あっはは…。 |
ヴィーノ&ヨウラン | はぁ…。 |
ヴィーノ | 婚約者だもんなぁ。いいよなぁ。 |
ヨウラン | ちぇ。ケーブルの2,3本も引っこ抜いといてやろうか?セイバー。 |
アスラン | 聞こえてるぞ二人とも。 |
ヴィーノ&ヨウラン | あッ!! |
アスラン | さっきのも全部。 |
ヴィーノ&ヨウラン | あぁすいません! |
マハムール基地オペレータ | ナブコムオンライン。コンタクト。メリットファイブ。LHM-BB01ミネルバ、アプローチそのまま。 |
マリク | コントロール、BB01了解。 |
メイリン | 入港完了。各員速やかに点検、チェック作業を開始のこと。以降、別命あるまで艦内待機。ザラ隊長はブリッジへ。 |
ルナマリア | 睨んでばっかいないで、言いたいことがあるんなら言えば?ガキっぽすぎるよそんなの。 |
タリア | ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。 |
アーサー | 副長のアーサー・トラインであります。 |
アスラン | 特務隊、アスラン・ザラです。 |
ヨアヒム・ラドル | アスラン…ザラ… |
兵士達 | アスランってクルーゼ隊の? |
アスラン | はい。 |
ラドル | いや、失礼した。マハムール基地司令官のヨアヒム・ラドルです。遠路お疲れ様です。 |
タリア | いいえ。 |
ラドル | まずはコーヒーでもいかがです?ご覧の通りの場所ですが、豆だけはいいものが手に入りますんでね。 |
タリア | ええ、ありがとうございます。 |
ルナマリア | そりゃあシンの気持ちも解んなくはないよ?いきなり出戻ってきてフェイスだ上官だって言われたって、そりゃねぇ。おまけに二度も叩かれて。 |
メイリン | はぁ。 |
ルナマリア | でもフェイスはフェイスだもの。仕方ないじゃない。その力がないわけじゃないし。 |
シン | 解ってるよ。もう五月蝿いなルナは。 |
ルナマリア | 何が解ってんのよそれで。 |
シン | いいからもう黙れよ。ルナには関係ないだろ。 |
ルナマリア | ッんもう! |
アイキャッチ(ラクス&キラ、月夜) |
メイリン | ふぅ。 んん…。 |
タリア | 状況はだいぶ厳しそうですわね、こちらの。 |
ラドル | ええ。流石にスエズの戦力には迂闊に手が出せませんでねぇ。 |
アーサー | はぁ…。 |
ラドル | どうしても落としたければ前の大戦の時のように、軌道上から大降下作戦を行うのが一番なんですが。何故かその作戦は議会を通らないらしい。 |
タリア | こちらに領土的野心はない。と言っている以上、それは出来ないってことかしらね。 |
ラドル | いたずらに戦火を拡大させまいとする今の最高評議会と議長の方針を私は支持していますが。ふん、だが、こちらが大人しいことをいいことにやりたい放題もまた困る。 |
タリア | と言うと?何かあると言うこと?スエズの他に。 |
ラドル | 地球軍は本来ならばこのスエズを拠点に一気にこのマハムールと地中海の先、我等のジブラルタル基地を叩きたいはずです。だが今はそれが思うように出来ない。何故か。理由はここです。 |
アーサー | ユーラシア西側地域か。 |
ラドル | ええ。インド洋、そしてジブラルタルがほぼこちらの勢力圏である現在、この大陸からスエズまで地域の安定は地球軍にとっては絶対です。でなきゃ孤立しますからね、スエズ。なので連中はこの山間、ガルナハンの火力プラントを中心にかなり強引に一大橋頭堡を築き、ユーラシアの抵抗運動にも睨みを利かせて、かろうじてこのスエズまでのラインの確保を図っています。まあおかげでこの辺りの抵抗勢力軍は、ユーラシア中央からの攻撃に曝され南下もままならずと、かなり悲惨な状況になりつつもありましてね。 |
アスラン | しかし逆を言えば、そこさえ落とせばスエズへのラインは分断でき、抵抗勢力軍の支援にもなって間接的にでも地球軍に打撃を与えることが出来ると、そういうことですね。 |
アーサー | ぉぉ! |
ラドル | ま、そういうことだ。だが向こうだってそれは解っている。となれば、そう簡単にはやらせてはくれないさ。こちらからアプローチできるのは唯一この渓谷だが、当然向こうもそれを見越していてね。ここに陽電子砲を設置し、周りにそのリフレクターを装備した化け物のようなモビルアーマーまで配置している。前にも突破を試みたが結果は散々でね。 |
アーサー | ぁぁ!あの時みたいな… |
ラドル | だが、ミネルバの戦力が加わればあるいは。 |
タリア | なるほどね。そこを突破しない限り私たちはすんなりジブラルタルへも行けはしないと。そういうことね? |
アーサー | ぇ?ぁぁ… |
ラドル | ま、そういうことです。 |
アスラン | … |
タリア | 私達にそんな道作りをさせようだなんて、一体どこの狸が考えた作戦かしらね。 |
ラドル | ん? |
タリア | ま、いいわ。こっちもそれが仕事といば仕事なんだし。 |
ラドル | ふふ。 では、作戦日時等はまた後ほどご相談しましょう。こちらも準備がありますし。我々もミネルバと共に今度こそ道を開きたいですよ。 |
アスラン | …くッ! |
ルナマリア | はぁ〜! |
メイリン | えぇ?じゃあシンてばあれから全然ザラ隊長と口きかないの? |
ルナマリア | まあね。ほんとにしょうがないわよね。シンてば全然子供なんだもん。 |
メイリン | だよねえ。悪いけど私から見てもそう思うもん。 |
ルナマリア | ま、そのうち何とかなるとは思うけど。どうせシンの負けで。 |
メイリン | だよね…ッ…ザラ隊長の方が全然大人でかっこいい……もうッ! |
ルナマリア | あれ?でも私と一つしか違わないんじゃなかったっけ?あの人って。 |
アスラン&シン | あ… |
アスラン | … |
シン | … |
アスラン | どうしたんだ?一人でこんなところで。 |
シン | 別にどうも。貴方こそいいんですか?いろいろ忙しいんでしょ?フェイスは。こんなところでサボっていてよろしいんでありますか? |
アスラン | ほんとうに突っ掛かるような言い方しか出来ない奴だな、君は。そんなに気に入らないか?俺が戻ったことも、君を殴ったことも。 |
シン | 別にどうってことありませんけどね。でも殴られて嬉しい奴なんかいませんよ。当たり前でしょ?だいたいこの間までオーブでアスハの護衛なんてやってた人が、いきなり戻ってきてフェイスだ上官だって言われたって。それではいそうですかって従えるもんか。やってること滅茶苦茶じゃないですか。貴方は。 |
アスラン | それは、そうだろうなぁ。認めるよ。確かに君から見れば俺のやっていることなんかは滅茶苦茶だろう。だからだと言いたいのか? |
シン | ん? |
アスラン | だから俺の言うことなど聞けない、気にくわないと。そういうことか? |
シン | わ…ぁいや… |
アスラン | 自分だけは正しくて、自分が気に入らない、認められないものは皆間違いだとでも言う気か君は。 |
シン | そんなことは! |
アスラン | なら、あのインド洋での戦闘のことは? |
シン | … |
アスラン | 今でもまだあれは間違いじゃなかったと思っているのか? |
シン | …はい。 |
アスラン | …。オーブのオノゴロで家族を亡くしたと言ったな君は。 |
シン | 殺されたって言ったんです。アスハに。 |
アスラン | ああ。そう思っていたければそれでもいいさ。だが、だから君は考えたっていうわけか?あの時力があったなら、力を手に入れさえすればと。 |
シン | ぁ!なんでそんなこと言うんです!? |
アスラン | 自分の非力さに泣いたことのある者は、誰でもそう思うさ。多分。 けど、その力を手にしたその時から、今度は自分が誰かを泣かせる者となる。 |
シン | … |
アスラン | それだけは忘れるなよ。俺達はやがてまたすぐに戦場にでる。その時にそれを忘れて、勝手な理屈と正義でただ闇雲に力を振るえば、それはただの破壊者だ。そうじゃないんだろ?君は。 |
シン | … |
アスラン | 俺達は軍としての任務で出るんだ。喧嘩に行くわけじゃない。 |
シン | そんなことは…分かってます! |
アスラン | ならいいさ。それを忘れさえしなければ確かに君は優秀なパイロットだ。 |
シン | ぁ… |
アスラン | でなけりゃただの馬鹿だがな。 |
シン | … |
ED(Life Goes On) |
-+-次回予告-+- 行く手を阻むローエングリンゲート。そして、敵モビルアーマー。 大局から見ればそれはもしかしたら、些細な状況。 が、そこにも生きる人々と願いがある。必死の少女の訴えにシンは。 次回、機動戦士ガンダムSEED DESTINY、「ローエングリンを討て!」 闇の迷路、駆け抜けろ!コアスプレンダー! |